ひどく眩しく感じられたのは、きっと。
一緒に見たのがあなたたちだったから。
06:もどかしい空
空へ、手を伸ばす。
雲ひとつない――とまではいかないが、ほぼ快晴の空を、は眩しそうに見つめた。
窓から腕を出し、天へ向かって突き出す。
限りなく続く――少なくともにはそう見える――青い空。
放たれた手を握って、その先をぼんやりと見た。
「何をしておるのだ?」
ひょい、と現れた幸村には少し驚き(とはいっても顔にはまったく出さないが)、反射的に笑顔を浮かべる。
「なんでもないですよ」
「うん?」
両手に抱えた団子を大切そうに持って、その中の一つを幸村はへ差し出す。
ありがとうございます、と一礼しては微笑み受け取った。
「はいダンナ、茶」
いつの間にいたのか佐助が幸村へ湯気のたった湯のみを手渡す。
「ったく、俺の仕事はダンナの世話じゃないっての。働かせすぎでしょーが」
「あ、私やったのに…」
茶を入れる技術だけは佐助に劣らない自信のあるだが、実際のところ対して差はない。
幸村はどちらの入れた茶も飲むし、どちらの茶へも文句をつけたことは過去なかった。
「で、何してたって?」
3人はを間にして座り、佐助はを見やってお茶を片手に問う。
「それが、こういう感じで…」
幸村は窓から手を出して上へ伸ばし、先程のを再現して佐助に見せた。
「あ、えーと」
空を見ていたんです。
のんびりと、は言う。
「は?」
「空ぁ?」
佐助は呆れたように、幸村は純粋に分からないというように、言う。
「暇だね。飽きない?」
「飽きないよ、失礼だな佐助は」
「そうだぞ佐助、某も見るが雲を見ているとだんだん腹が減ってき」
「「何の形に見えてるの」」
はあ、と溜息を吐く佐助に対し幸村は「なぜ呆れておるのだ!」とつっかかる。
は苦笑して、視線を手元に落とした。
「空とは、綺麗なものだな」
不意に聞こえた呟きに、は首を横にする。
そこには、顔を上げて空を見上げる幸村が居て。
彼は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「どこまで続いてるんだろーね」
今度は180度動かし反対を見れば、佐助と目が合い。
「どこまで、かな」
ポツリとは呟く。
「手を伸ばせば届きそうなのに」
先程と同じように、は腕を窓から突き出して空気を掴む。
「高くて、かすりもしない」
3人並んで見上げた空は、嵐の前のような静けさを持っていた。
これくらいショートな話が一番書きやすい。