この細い首に手の痕を残せたら

この細い首を締め上げ血の通わぬ人形にできたら

30000hit お礼フリー夢
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Silence the inside madness. 静寂の中の狂気

薄暗い保健室には、いつも居るはずの口煩い校医はいない。
その代わりにベッドを占領しているのはリドルと黒髪青眼の少女。
正しく現状況を述べるなら、両手を青とブロンズ色のネクタイ―――自分の―――で括られベッドへ横にさせられている少女と、その上に覆いかぶさるように乗っているリドル、だ。
リドルの手は目の前の少女の首にかけられている。
しかしその指には力がこめられて、は、いない。
その姿のまま時間は過ぎるのみ、だ。

「…何がしたいの、貴方は…」

ため息混じりには洩らす。 その瞳にはリドルに対する恐怖も何もなく、ただそこにあるものを見つめているだけ、だ。
冷たい瞳は何も映さない。
ただ冷ややかに、リドルを見る。
ドイツ人であるの肌は白く、リドルが少し力をこめれば簡単に紅く痕がついた。

「…ただ、君の顔が恐怖に歪む姿を見たいだけ、さ」
「暇人ね…」
「本当にそう思うのか?」
「別に…滑稽だと思っただけよ…」

も自分の置かれている状況が分からないわけではない。
むしろ頭の良い彼女には常人よりも理解力は高いだろう。

「この場合の滑稽の定義を述べて欲しいね」
「貴方と言葉遊びをする趣味はないのだけれど…」
「僕だってそんな趣味は持ってないさ」
「一応聞いておくけれど何故こんな事を…?」
「さぁ。君が知る必要性は皆無だ」
「サディストという言葉を知っていて…?」
「僕がそうだと言いたいのか?」
「さぁ…どうかしら…」

にこりともしない、泣きもしない、命乞いさえもしない。
自分の立場を理解しているというのに、だ。
リドルは少しばかり指に力を加え、首を絞めた。

「…泣かないんだ?」
「泣く必要性があって…?」
「…面白くない」
「それはごめんなさいね…泣けないみたいだわ…」
「何故?」
「さぁ…悲しくも怖くもないからじゃないかしら…」
「それは死んでもいいという意味に捉えていいのか?」
「どちらでも…お好きなように…」

命が惜しくないわけではあるまい、とは思うのだが、の考える事はよく分からない。
はっきり言って不可解だ。
生にも執着を見せない、死を望むわけでもない。

だからこそ、リドルの興味を引いたのかも知れない。

人間になんて興味がなかった。
マグルにだけは嫌悪するものがあったけれど、他の人間なんてどうでもいい。
そうだったはずなのに―――…

他とは違う雰囲気を持っていた
弱い“群れ”のような人間達の中で唯一独り絶対的に違った『何か』。
笑わない、喜ばない、悲しまない、怒らない。
ただ、そこに存るだけ。

そんな彼女に、リドルは惹かれた。

「死にたいの?」
「どうしてそう思うのかしら…」
「抵抗しないからかな」
「この状況でどう抵抗しろと…?」
「なら手首を解いたら抵抗するのかい?」
「いいえ…面倒だもの……」
「本当に、生と言うモノに執着がないんだね」

「そういうわけでもないわ…」

リドルの耳に入って来たのは、予想外な言葉。

「その割には僕を怒らせるのが得意だよね、君は」
「怒っていたの…?貴方は……」
「今君の命を握っているのは僕だって事ぐらい分かるだろう?」
「そうね…貴方がその指に力をこめれば、私は死ぬわ…」
「だったらどうして僕の神経を逆なでする事ばかり言うんだ…っ!?」

面白くない。
イライラする。
どうして泣かない。
どうして恐怖に顔を引きつらせない。

どうして、自分の思うとおりにならない。

「貴方は私を殺さないもの…」

「…っ!」

電流が、走ったかと思った。

この細い首に手の痕を残せたら
この細い首を締め上げ血の通わぬ人形にできたら、どんなに奇麗な芸術になるだろう。
その芸術を見るだけでこの女を殺す価値はある。

生に執着していない?
―――冗談じゃない。
むしろ誰よりも強く生に対して執着心を持っている。
生も死も、彼女にとっては『何か』の始まりに過ぎないのだ。
自分の命を『何か』の前置きだとが考えているなら、だとしたら、

だとしたら―――…

その『何か』を拝む方が、『芸術品』を見るよりもずっといい。

「…本当に面白いね、君は」

リドルは、ゆっくりとの首から手を離した。

「…さっきと言っていることが矛盾してないかしら…」
「さぁ。どうだろうね」

リドルは曖昧に答えくすりと笑う。
手は離してもの両手の拘束は解くことをせず、リドルはの服に手を伸ばした。
ローブを剥ぎ、シャツに手をかけボタンを外す。
表情一つ変えることをしないに、リドルはゾクリとした。

『何か』をするつもりなら、さっさと仕掛けてくればいい。
その保険に彼女の中に自分の遺伝子を残そう
純潔のと言う名の人間の中に、“穢れた血”を含んだトム・マールヴォロ・リドルの呪われた遺伝子を―――…。

そして忘れた頃『何か』を見るのも、また一興ではないか。

暗い中、リドルは紅い眼を光らせ妖艶に微笑した。


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お礼フリー夢のくせに本当に感謝の気持ちが表れているのか分からないという…(汗)。
初・リドル夢。
私的リドルはこんな感じです。狂気を帯びた正気、というか。
[軽々しく書けそうにない15のお題]より“一興”。何か使い方を間違えている気がする。
2005,08,08
※配布期間は終了しています。