・ヴァルハラートのこと
マルティージョ・ファミリー、フィーロ・プロシェンツォ曰く
あいつにマフィアのボス以上に向いてる職はない。
まず人の動かし方が上手いんだ。
扱い方とか能力の適性だとか…だからの下には人が集まるんだろうな。
まあ顔も整ってるし、あんな綺麗な顔して一晩でどっかの組織を壊滅させたなんて話も聞くけど…しかもたった一人で。信じられないだろ?
あと、あいつは優しさと冷たさの使い所をよく理解してるよ。
仕事と感情をキッチリ分けてるって言うか。俺があいつをマフィアに向いてるって断言する理由はそこだ。
は仲間を凄く大事に思ってるし、家族同然くらいに考えてると思う。
けど、実際心を許しきってる訳じゃない。
心を許すのと信頼するのはイコールじゃないんだな、あいつの場合。
が本気で自分の本心をだせる相手か…。
俺とクレアと、ガンドール3兄弟、それにロニーさんくらいじゃないか?
俺達は幼馴染みだからだと思うけど…やけに仲良いんだよな、とロニーさん……。なんでだ?
まあ、話を戻すぞ。
このあいだファミリーの計理士が横領してたらしいんだよ。
そいつは結構な古株だったし真面目な男だったから、構成員の奴らもまぁ命は助かるんじゃないかって言われてたらしいんだ。
横領なんてやった理由ってのが一人息子の手術代だったってこともあったしな。
そういう事情とかも全部知った上で、はたった一言。
「残念だ」
それだけ言って銃を投げたんだ。
あいつは仕事じゃどんな事情があろうと、どれだけ親しかろうと関係なく非情になれる。
情けなんてのは一切かけないし、敵や規律違反は老若男女別け隔てなく容赦しない。
そういうところは根っからのギャング気質なんだろうな。
けど、これは一部の人間しか知らない話をすれば…その子供の手術代は、が肩代わりすることになったんだと。
手術代は出す、だから自分のしたことの責任はとれ。早い話がそういうことだ。
マフィアとしての冷徹さと、一人の人間としての寛容さ。はその二つの面を持ちながら、使い分けてる女なんだよ。
ただ、ちょっと強がり過ぎなところがあるからなぁ。
時々何日も貫徹してる様子を見ると心配になるんだよな、幼馴染みとしては。
ただでさえ身体弱いってのに…。
―――あいつ、子供の頃からあんなに咳してたっけ?
ま―――ラックがついてりゃ大丈夫か。
ところであの二人いい加減くっついたのか?
恋人っつーより、父娘みたいな雰囲気だし…。
いや、父娘ならむしろロニーさんとの方がそれっぽいな。
…あの二人、本当にどういう関係なんだ?
―――俺のことはほっとけ!
フィーロにマフィアとしての彼女を重点に語ってもらいました。