「私もここ住みたいなぁ」
「はあ、いいですよ」
「…えぇ?」
ぽつりと呟いたの言葉をあっさりと承諾してしまったのは部屋の持ち主であるラックだった。
「書斎をそのまま私室にしても構いませんし」
「え、ほ、本当に?」
「冗談だったんですか?」
「ん…いや本心、だけど」
「それなら何を動揺することあるんです」
「うわぁ。恥ずかしくなってきた」
「…なんと言うか、今更ですね」
ソファから立ち上がったラックはの手をとるとリビングを出て寝室へ向かう。
寝室は3兄弟が幼い頃子供部屋にしていた部屋なので幾分広くとってあった。
「問題は寝室ですが…分けた方がいいですか?」
窓際のベッドへ腰かけるとラックはを隣に座らせてシーツへ広がる長い黒髪へ触れて。
琥珀色の瞳に至近距離で見つめられると照れる、と頬を少し朱に染めては悩んだ。
本当は、一緒の部屋か向かいなど近くの部屋が良い。しかしベッドを置くとなると間取り上少し距離をあけた部屋に置かざるを得ない。
極度の怖がりであるにとって一人きりの暗闇は拷問だった。
自分に害をなす者が生身の人間であるならまだ良い。だがは悪魔だとか悪霊だとかそういうオカルトの類のものは完全にアウトなのだ。
暗いところや静かで一人の空間だと鏡もまともに見れないほどに。
今でさえ泊まり込んでいる(元より彼女の所有物であるからに彼女の家とも言えるのだが)マフィア・ファミリーの事務所の自室のすぐ隣には腹心の秘書の部屋を当てていて、薄いドア一枚でお互いの部屋を行き来できるようにしているくらいだ。
つまり、これまでと自分の性質を考えるにラックへの返答は決まっているようなものだが、どうにも自分から言うのははしたないような気がして恥ずかしかった。
恥を捨てきれず視線を泳がせる姿を、ラックは素直に可愛いと思う。
言わなくても伝わるといい、と思いながら染まった顔をうつ向かせてラックの胸へ倒れ込んだ彼女の肩を優しく抱き寄せた。
頼りなくラックのシャツを握るから(判って)と子供じみた雰囲気が感じとれたがラックはそしらぬフリをして理解に蓋をし、ラックとてが一人で寝れないことは知っているのだけれど。
「どうしますか?」
の顎を指で上に傾け、口元に笑みをたたえて言う。どうしても言わせたいらしい。
「…一緒が、いいです…」
は思わず敬語になってしまい、相変わらず一つ年上の恋人は知っていた以上に意地悪で、一生勝てそうにないと思った。
より幾分大きな手がシャツから彼女の指を絡めとり1本ずつ捕らえシーツの上へ縫い止めて。
ラックは軽く唇へキスすると段々激しくはないが深い繋がりに変えてゆく。
繋がりの隙間から声が漏れる頃、ラックは完全にベッドの上でを押し倒していた。
そのまま酷く圧迫した格好で抱き締める。
身動きのとれない程密着し、互いの心音から何から何まで全て相手に聞こえてしまうような気がした。
「ダブルベッドを買いましょう」
ラックの言葉には数秒遅れて反応し、意味を理解すると耳まで真っ赤に染め上げて。
今部屋にあるシングルベッドは言わずもがな宿主であるラックのもので、それからダブルベッドに買い換えるということはそれ則ち。
「ちちちち違…っそ、んな意味じゃなくてっ、部屋、部屋が同じがいいんであって、ベ、ベッド、は…」
「…添い寝してほしいんでしょう?」
「うー……」
耳元で、そんな甘く優しい声で囁かれたら。堪らない。
「さすがに二人だとシングルでは窮屈ですからね。それに…」
「ん…?」
「狭いと動き辛いですし」
「……えっち!」
「なんとでも」
ラックは白い双房の谷間に顔を埋めシャツの上から豊満な肉にカプリと歯を立てた。
「ちょっと待って…」
どちらかと言えば流され易いタイプであると自身自覚している。
しているだけにこの状況はまずいと拘束を解いた両手でラックの肩を押すが密着し過ぎている所為か上手く力が入らず体勢は少しも変わらない。
そうこうしている内にもぞもぞと動くラックがの足からブーツを抜いてしまってラックも靴を脱いでベッドへ上がり、準備万端。
再び唇を重ねると今度は舌も入れて、まるでの舌を絡め取っていくのと同時に思考力まで奪おうとしているかの様だ。
追い詰められると直ぐに逃げ出す舌と遊びながらラックはのシャツのボタンを器用に外していく。
彼女がのけぞった隙に背へ手をまわし下着のホックも外した。
濃密なキスから解放するとラックの唇はそのまま下がって顎を、首を、鎖骨を伝って下着をくわえ上へずらす。
隠す物のなくなった豊満な双房が露になるといよいよは抵抗を強め身をよじる。
彼女と初めて交わった時にも思ったが、相変わらずいつまでたっても反応が処女らしい。
けれど快感への期待にとがる胸の突起からも身体は確実に男を知っていて、結局彼女の心だけが生娘のまま。
ぐずるをそのままに膨れた突起へしゃぶりつくと鼻にかかった高い声が微かに漏れた。
舐めて吸って舌先で押し転がすとは下唇を噛んでいやいやと首を横に振る。
ああ、泣きそう。
悲しませたいとは思わないがラックはのそんな表情を見るのが好きだ。
異性として、正確に言うと女の子として扱われることにはいつまでたっても慣れないらしい、きっと一生彼女は慣れないのだろうと思う。
そしてラックは彼女のそんなところも可愛いと、愛しいと感じていて。
左手で空いている片方の膨らみをやわやわと揉むと、が戸惑いに近い視線を送ってくるのが判った。
温かく柔らかくてふっくらとした豊かな白い乳房はが身じろぎする度ラックを誘うかの如く揺れる。
指先で突起を少し摘めば甘い悲鳴がの喉をついて出る度ラックを興奮させ、求めさせた。
下から掬い上げるように胸を揉み親指の腹で刺激すると一際大きな声が上がりその呼吸を不規則に乱す。
「駄目…だめ……」
だめ、と呟くように繰り返して形ばかりの些細な抵抗を見せるが既に快感に溺れかけていることは明らかで。
「ん…」
「好きです」
ラックはの耳へ唇を寄せ低く囁いて耳たぶへキスを落とした。
「好き、です」
肩に顔を埋めて肌を吸い上げ、腰を引き寄せてもう一度。
耳から入り三半規管を抜け脊髄を通って脳へ達しゾクゾク全身を駆け上がる快感には泣きそうな顔で、というより半分泣きながらぶるりと震えてラックの首へ腕を回す。
恥ずかしさで死にそうだと思った。不死者故に死ねないのだけれど。
ちゅ、と頬へ降ってきた軽いキスと目の合った時のラックの優しい微笑に少しほっとして、張り詰めていた気を緩めて気付く。
いつのまにかベルトを解いていたのズボンの中に右手が進入していたことに。
どちらかといえば綺麗な部類に入るラックの指が下着の上からスジを撫で、強く擦る。
今までと比べ物にならない電流のような刺激に「ヒッ」と小さく悲鳴を上げて弓なりに背中をしならせ喉を無防備に曝け出した。
何度も往復する指から絶えず与えられる快感に堪えられず、ぱく、と開く口、小刻みに震える2本の脚。
だんだんと中心が湿ってきた下着に気を良くし、ラックは下着の横から指を2本差し込んだ。
入口へ指を入れると、ぐちゅりと指に温かな粘液が絡みついてラックはクス、と小さく笑う。
「…こんなに濡らすほど気持ちいいんですか?」
ぐちぐちと音を立ててそこをかき回しながら得意の意地悪を言うとの目から涙が溢れた。はしたないと思ったのかもしれない。
けれど身体は快楽に従順で「もっと」とねだる様に腰が揺れる。心と身体の向かうベクトルがまったくの逆方向で自分でもどうバランスをとればいいのか判らない。
指は奥まで入らず入口で遊んでいて、時折爪が敏感な部分を掠りをおかしくさせた。勿論狙ってやっている。
「も、もうやだ…!」
本当はもっと構ってあげたいところだが、が呼吸器官を患っている為長い時間行為に及ぶことはできない。
そして、理性を飛ばすには弱すぎ、やり過ごすには強すぎるというなんとも中途半端な刺激にの限界点が訪れた。
「貴女が望むなら、存分に」
年上ぶって強気に出て余裕があるように見せているラックも、呼吸が乱れそうなほど興奮が激情を動かしていることを気付かれないように隙間から指を抜いて下着の中へ手を入れて蜜の零れるところへ激しい愛撫を送る。
の呼吸の感覚が短くなってゆくのをすぐ耳元でダイレクトに感じながら目を閉じ指を動かした。
「あ、あ、あ、あっあっあっあっっあ―――っ!」
は強くラックの背のシャツを握り、達した途端倦怠感のためか首へ回した腕をだらりと下げ。
ラックは焦点の定まらないの目を覗きながら苦笑し、彼女の濡れた下着とズボンを一緒に白い脚から抜いてベッドの舌へ落とした。
「…脚、開いてください」
いい子ですから、とまるで子供へ言い聞かすようにして瞼にキスをし反応を待つが、返されたのは強張った表情と首を横へ振る姿で。
「脚を開きなさい」
少しだけ強く命令口調で言うと、今度は一度肩を跳ねさせて恐々と少しずつ脚を左右へずらした。そうしなければならないと思ったのかもしれない。正常な思考などとうに失われている。
両脚の間に出来た隙間にラックは身体を滑り込ませると脚を撫でながら、
「よくできました」
とを褒めた。
ラックの愛情は毒の様だ。
ゆるゆると流れ込んで徐々に神経を侵してゆき、正常な判断力を奪い、もがくほどに全身をまわる。
何度拒否し解毒を繰り返してもどこかでまだ残っていて、再び少しずつ身体を麻痺させてゆく。
侵されてもいいと思った。侵されたいと、思った。
身体も心も痺れたまま緩慢な危惧を抱えて、落ちた先が彼の腕の中であればいい、と。
律動とラックの体温を中で直に感じながらぼんやりとは思った。
「いつ頃こちらに移りますか?」
ベッドの中の次の日の朝、おはようと言われたその次に出た言葉が同棲しようと言っていた事を指すのだと気付くのには少し時間を要した。
まだだるさの残る身体でラックに擦り寄ると彼も答えるように背へ手をまわす。
半端に服を着ているが殆ど裸の状態で密着するのはなんだか気恥ずかしかった。昨夜それ以上のことをしていたとしても。
「…新しいベッド、買ったら」
ほのぼののつもりが流れで後半が若干えろい。同棲前
あまり声入れずに書いてみた。やっぱり私の文章は色気に欠けている…