『出会いは偶然なんかじゃない。限らず、偶然はどれも必然だから』
知り合いの馬鹿がそう言って笑った。
Dark red −彼岸花―
Part1.01 かくも舞台の幕は上がる
ホグワーツ行き特急9と3/4番線は、9月1日の今日とても混み合っていた。
ホームが混み合っているのだから当然車内も混んでいる。多数の生徒は、己が座る席の確保に勤しんだ。
1年間ホグワーツで過ごす生活を今年4年目となったシリウスも、例に漏れず席取りに頭を悩ませていた。
「ったく、ジェームズがエバンズを追っかけてた所為で、もうどこも空いてないじゃねーか!」
「相変わらず綺麗だったなー、エバンズv」
「聞けよお前!」
「シリウス、今は何を言っても無駄だと思うけど」
リーマスはシリウスと共にジェームズを引きずりながら、キョロキョロと周りを見回し4人が座れるところを探す。
途端、ジェームズの目に一箇所が止まり目の動きが静止した。
そこにはすでに制服へ身を包む男子生徒が一人座っているだけである。
「ここいいかな?他はどこも空いてなくてさ」
声をかけると、それまで窓から外を眺めていた少年が顔を向ける。
瞬時に、ジェームズはこの席に一人しか座っていなかった訳を理解した。
少年の顔は随分端整で繊細な顔立ちをしていた。
白い肌を際立たせる黒髪は無造作に伸ばされ、長い前髪がはらりと目へかかっている。
両目は総てを見透かすような妖しい真紅を。
容姿端麗とはこのことか。
シリウスもかなりの男前の域へ達するが、彼もまたそれに見劣りすることがない。
誰もこの席に座らなかった―――座れなかった、のは、彼の纏うオーラが誰も寄せ付けられないような―――絶対的なモノだったから、か。
ジェームズは、初対面のはずの彼の顔に、どこかで見たような気を、覚え。
「…どうぞ」
少々女性的な雰囲気を兼ね備えた中性的容姿の少年は、ただ一言言うとテーブルの上に重ねられた本を自分の方へ引き寄せた。
「ありがとう、助かったよ。えーと?」
「・」
「よろしく、4年のジェームズ・ポッター。君の真正面から左にシリウス、リーマス、ピーター。は今年入学?ネクタイ真っ黒だけど」
それにしちゃ大人っぽいけど…と、ジェームズは一人考える。
「いや…諸事情故の、編入生」
「ふぅん。どこの寮に入りたいと思う?僕らはグリフィンドールなんだけど」
問われ、はしばし考え込んだ。
正直どこでも良かったのだがふと友人の姿を思い浮かべる。
「…スリザリン」
本へ視線を落とし、表情なくは言う。
ジェームズとシリウスの眉がぴくんと上がった。
「へぇ?」
もしこれで本当にスリザリンに入ったら思い切り遊んでやろう…とシリウスは密かに思う。
この先、遊ぶ余裕などなくしてしまう自分を知らず。
また、の鞄から赤い目が覗いていたことにも、誰も気付かず。
ぎこちなく、歯車は動き出したのだ。
------------------------------
ピーターが一言も喋ってない。
(2005.3.31)
改訂版(2006.8.5)
BACK TOP NEXT