回れ、回れ、我が運命(さだめ)よ。
それがたとえ何だとしても、私は只々享受しよう。


Dark red −彼岸花―
Part1.02 魂返り



新学期、新入生の組み分けが終わるといつものようにダンブルドアの話が始まる。
そして異例の途中編入の話が持ち出されたとき、広間はわっと騒がしくなった。
扉一枚はさんだ向こうでそれを聞いていたは心底入りたくないと思う。
元々静寂を好み一目を集めることが嫌いなだが、本人の意思とは裏腹に一目を引く容姿。
傍目からは綺麗だ綺麗だと賞賛される顔立ちも、はあまり好きではなかった。

『―――あの人によく似たのね…』

自分をこの世へ胎内から生み出した女と言葉を交わしたのは、今のところこの一言が最初で最後である。
美しい思い出とは決して言えない過去の一場面を思い出し、は整った眉を僅かに歪ませて溜息をついた。
母の通っていたホグワーツ。
―――本当の父親も、きっと、通っていた魔法学校。
自分が通うようになるとは思ってもいなかったは、再度溜息をついた。

「・君じゃ」

その声に、扉は開かれた。


端整で繊細な顔立ちに艶やかな黒髪、光る紅眼。
すらりとした体つきの彼は、4人が車内で会った少年で、広間中の注目を集めていた。
男でさえその気がなくとも見ほれてしまうような中性的な美しさ。
長い足で乱れることない足音を響かせ、背筋をピンと伸ばしどこか品のある雰囲気を漂わせて歩き組み分け帽子の前へ立つ。
側で待機していたマクゴナガルに促されは椅子へ座ると、ふわりと頭へ帽子を被せられた。

『こんにちは』
「どうも」
帽子が話しかけてきたことに多少吃驚するが、そういうところでは順応性の高いである。
『君は…おお、なんということだ……かの偉大なる人の』
「組み分けの結果は。…スリザリンか?」
帽子の言うことを遮るようにして、は結果を促した。
組み分け帽子は人の本質を見抜く。
気付いたのだろうか。

・と言う人間が、()の血を受け継いでいることに。

―――その魂、故に。

『まさか会えるとは、否、…子を儲けていたとは……。しかし…ふむ、難しい。似て異なる存在(・・・・・・・)…、対極を合わせ持つ者(・・・・・・・・・)か…。君は、スリザリンを望むのかね?』
「…正直、どうでもいい」
『自分のことでも?自分のことだと言うのに、君はそう思われるのか』
「…興味が、ない」
『―――君は、今まで穏やかな人生を歩んでこなかったようだ。その瞳の下に、冷たい悲しみを潜め…』

組み分け帽子の言葉に、は心中首をひねる。
穏やかな人生を、歩んでこなかった……?
そんなはずはない。
大きな家に住んで、温かいご飯を食べて、何もかも満たされた、何不自由のない生活をしていて……

『よろしい。君がここで心休まる友人を得、』

コレのどこが、穏やかでないと言うのか。

『新しい生活が平穏になることを祈って、私は叫ぼう―――』

そして、運命を告げられる。

『グリフィンドール!!』


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サブタイトルは『タマガエリ』と読んでください。
嬢の一人称を『俺』から『私』に変更。
理由は特になくやっぱりそっちの方が紳士っぽいってだけですとも。
(2005.3.31)
改訂版(2006.9.23)


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